標準模型
場の理論をもとにした素粒子モデル
標準模型は場の量子論を主なツールとして、素粒子をクォークで構成されるバリオンと力を媒介するゲージ粒子からなる素粒子モデルです。場の量子論も電磁気力に応用された量子電磁力学(QED)を基礎として、電弱統一理論、量子色力学(QCD)と発展し、いくつかの新しい考え方を導入し、かつ精度の良い実験的予測を示しています。
物質を構成する粒子は、電子とクォークというフェルミ粒子であり、それぞれ三つの世代があります。力を媒介する粒子はボーズ粒子で、電磁気力は光子、核崩壊に関係する弱い力はウィークボソン、核力に関係する強い力はグルーオンです。こちらにも世代があり、世代間は弱い相互作用を通じて変換可能です。
場の量子論では、相対論的量子力学に従う「場」そのものが量子化され、力が粒子のやり取りで表現されます。その過程はファインマン・ダイアグラムによって図に表され、仮想粒子を含めた計算が可能です。電子と光子の相互作用では、電子と光子が散乱するコンプトン効果(コンプトン散乱)や、二つの光子から生成する電子・陽電子ペア(対生成)が予測できます。
場の理論の系列
場の理論の始まりは、ファラデーが電気力において電場を導入したことに始まります。磁場とともに最初は便利なツールと考えられていましたが、マックスウェルにより電磁場が独立して電磁波を生成することから、物理的実体と見なされるようになっています。一般相対性理論も場の理論として定式化されています。しかしその正体は現在でも明らかとはいえないでしょう。
量子力学に特殊相対性理論を加味した相対論的量子力学において、スピンが自動的に組み込まれ、また反粒子が理論的に現われます。これにより、ディラックは真空を電子の海と見なす考えを提案しましたが、互いに反発する電子の海を定式化するのは困難でした。そして場を量子化して粒子が生成・消滅する場を考えることで、その困難が回避され反粒子も自然に取り込めるようになりました。
そうして最初に定式化された場の量子論は、量子電磁力学(QED)であり、電子と光子の相互作用を扱います。その摂動論において、ファインマン・ダイアグラムを書くことにより、相互作用の計算が可能になります。電磁気力は電子が仮想の光子をやり取りすることで発生します。仮想粒子とは、量子的ゆらぎによって一瞬だけ存在する粒子であり、そのときエネルギー保存側は満たされていません。
次に定式化されたのは、弱い相互作用の場で、これは原子核の崩壊に関連したあまり目立たない力です。重いWボソン・Zボソンを媒介とする近距離相互作用の場です。電磁相互作用と弱い相互作用は、電弱統一理論(ワインバーグ=サラム理論)により統一された形式で記述されています。
さらにクォークの結合を支配する強い相互作用は、カラー荷を取り込んだ量子色力学で定式化されます。陽子や中性子の中での三つのクォークの結合や、中間子の中での二つの(反)クォークの結合に関わり、距離が離れるほど強まる相互作用になっています。逆に近距離では相互作用は弱く、漸近的自由と呼ばれます。
ゲージ場の理論
ゲージ理論では波動関数の位相空間の変換で、物理量の不変性の要請により局所的な対称性をもたらし、相互作用を表わすゲージ場を導入します。ゲージ変換で不変な場の量子論は、相互作用として場の量子(光子やWボゾン、グルーオン)を含み、繰り込み可能な理論となります。
量子電磁力学では、ゲージ変換は単純な一次元の複素数空間での回転で、可換なユニタリー群U(1)と等価になります。可換のU(1)では、場の量子(光子)間の相互作用はなく、電子など電荷を持つ粒子との相互作用だけが追加されます。
弱い相互作用では、弱アイソスピン空間の二つの複素数波動関数での回転がゲージ変換で、非可換な二次元特殊ユニタリー群SU(2)と等価になります。非可換なSU(2)では、クォークなど物質を構成する粒子だけでなく、場の量子(Wボソン)間の相互作用もあります。電磁気と弱い相互作用を統一した電弱統一理論では、二つの群を組み合わせたU(1) X SU(2)が対応し、一部波動関数の混合が見られます。
強い相互作用では、三つのカラー荷に対応して三次元特殊ユニタリー群SU(3)が対応します。相互作用は八種類のグルーオンと発生します。これも非可換な群なので、場の量子であるグルーオン同志も相互作用します。
標準模型の基礎はあくまで場の量子論ですが、ゲージ理論を併用することによって、場の量子との相互作用が自然に導入されます。そのため、いくつか新粒子の予言が可能でした。
質量とヒッグス粒子
ゲージ理論は強力なツールですが、場の量子に質量がある場合には、その運動エネルギーの項を含めると、ゲージ変換にたいする不変性が成り立たなくなります。場の量子である光子に質量がない量子電磁力学では問題になりませんが、Wボゾンが質量を持つ弱い相互作用では、ゲージ不変性が成り立たず繰り込み不可になってしまいます。
弱い相互作用において、ゲージ不変性を成立させるためには、新たな場、ヒッグス場が必要になり、その場の量子、ヒッグス粒子に対してあるポテンシャルを仮定することが要請されます。しかしヒッグス粒子はまだ発見されていません。
標準模型に関しては、ゲージ理論はヒッグス粒子の発見如何にかかっていて、けっして完成されたモデルではありません。質量の起源についてもヒッグス粒子に先送りした形で、発見された場合さらにヒッグス粒子の質量を説明する必要があります。
超対称性と統一理論
標準模型でも超対称性を取り入れることで、三つの力が高エネルギー側でぴたりと一致することがわかります。ヒッグス粒子とともに、超対称性のパートナー粒子も発見が期待されています。しかし、標準理論の枠内で統一理論が確立されているわけではありません。
標準模型は場の量子論を主なツールとして、素粒子をクォークで構成されるバリオンと力を媒介するゲージ粒子からなる素粒子モデルです。場の量子論も電磁気力に応用された量子電磁力学(QED)を基礎として、電弱統一理論、量子色力学(QCD)と発展し、いくつかの新しい考え方を導入し、かつ精度の良い実験的予測を示しています。
物質を構成する粒子は、電子とクォークというフェルミ粒子であり、それぞれ三つの世代があります。力を媒介する粒子はボーズ粒子で、電磁気力は光子、核崩壊に関係する弱い力はウィークボソン、核力に関係する強い力はグルーオンです。こちらにも世代があり、世代間は弱い相互作用を通じて変換可能です。
場の量子論では、相対論的量子力学に従う「場」そのものが量子化され、力が粒子のやり取りで表現されます。その過程はファインマン・ダイアグラムによって図に表され、仮想粒子を含めた計算が可能です。電子と光子の相互作用では、電子と光子が散乱するコンプトン効果(コンプトン散乱)や、二つの光子から生成する電子・陽電子ペア(対生成)が予測できます。
場の理論の系列
場の理論の始まりは、ファラデーが電気力において電場を導入したことに始まります。磁場とともに最初は便利なツールと考えられていましたが、マックスウェルにより電磁場が独立して電磁波を生成することから、物理的実体と見なされるようになっています。一般相対性理論も場の理論として定式化されています。しかしその正体は現在でも明らかとはいえないでしょう。
量子力学に特殊相対性理論を加味した相対論的量子力学において、スピンが自動的に組み込まれ、また反粒子が理論的に現われます。これにより、ディラックは真空を電子の海と見なす考えを提案しましたが、互いに反発する電子の海を定式化するのは困難でした。そして場を量子化して粒子が生成・消滅する場を考えることで、その困難が回避され反粒子も自然に取り込めるようになりました。
そうして最初に定式化された場の量子論は、量子電磁力学(QED)であり、電子と光子の相互作用を扱います。その摂動論において、ファインマン・ダイアグラムを書くことにより、相互作用の計算が可能になります。電磁気力は電子が仮想の光子をやり取りすることで発生します。仮想粒子とは、量子的ゆらぎによって一瞬だけ存在する粒子であり、そのときエネルギー保存側は満たされていません。
次に定式化されたのは、弱い相互作用の場で、これは原子核の崩壊に関連したあまり目立たない力です。重いWボソン・Zボソンを媒介とする近距離相互作用の場です。電磁相互作用と弱い相互作用は、電弱統一理論(ワインバーグ=サラム理論)により統一された形式で記述されています。
さらにクォークの結合を支配する強い相互作用は、カラー荷を取り込んだ量子色力学で定式化されます。陽子や中性子の中での三つのクォークの結合や、中間子の中での二つの(反)クォークの結合に関わり、距離が離れるほど強まる相互作用になっています。逆に近距離では相互作用は弱く、漸近的自由と呼ばれます。
ゲージ場の理論
ゲージ理論では波動関数の位相空間の変換で、物理量の不変性の要請により局所的な対称性をもたらし、相互作用を表わすゲージ場を導入します。ゲージ変換で不変な場の量子論は、相互作用として場の量子(光子やWボゾン、グルーオン)を含み、繰り込み可能な理論となります。
量子電磁力学では、ゲージ変換は単純な一次元の複素数空間での回転で、可換なユニタリー群U(1)と等価になります。可換のU(1)では、場の量子(光子)間の相互作用はなく、電子など電荷を持つ粒子との相互作用だけが追加されます。
弱い相互作用では、弱アイソスピン空間の二つの複素数波動関数での回転がゲージ変換で、非可換な二次元特殊ユニタリー群SU(2)と等価になります。非可換なSU(2)では、クォークなど物質を構成する粒子だけでなく、場の量子(Wボソン)間の相互作用もあります。電磁気と弱い相互作用を統一した電弱統一理論では、二つの群を組み合わせたU(1) X SU(2)が対応し、一部波動関数の混合が見られます。
強い相互作用では、三つのカラー荷に対応して三次元特殊ユニタリー群SU(3)が対応します。相互作用は八種類のグルーオンと発生します。これも非可換な群なので、場の量子であるグルーオン同志も相互作用します。
標準模型の基礎はあくまで場の量子論ですが、ゲージ理論を併用することによって、場の量子との相互作用が自然に導入されます。そのため、いくつか新粒子の予言が可能でした。
質量とヒッグス粒子
ゲージ理論は強力なツールですが、場の量子に質量がある場合には、その運動エネルギーの項を含めると、ゲージ変換にたいする不変性が成り立たなくなります。場の量子である光子に質量がない量子電磁力学では問題になりませんが、Wボゾンが質量を持つ弱い相互作用では、ゲージ不変性が成り立たず繰り込み不可になってしまいます。
弱い相互作用において、ゲージ不変性を成立させるためには、新たな場、ヒッグス場が必要になり、その場の量子、ヒッグス粒子に対してあるポテンシャルを仮定することが要請されます。しかしヒッグス粒子はまだ発見されていません。
標準模型に関しては、ゲージ理論はヒッグス粒子の発見如何にかかっていて、けっして完成されたモデルではありません。質量の起源についてもヒッグス粒子に先送りした形で、発見された場合さらにヒッグス粒子の質量を説明する必要があります。
超対称性と統一理論
標準模型でも超対称性を取り入れることで、三つの力が高エネルギー側でぴたりと一致することがわかります。ヒッグス粒子とともに、超対称性のパートナー粒子も発見が期待されています。しかし、標準理論の枠内で統一理論が確立されているわけではありません。
by scienceman
| 2010-12-31 16:31
| 現代物理