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サイエンスマンの本格科学メモ

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現代物理、進化論、脳科学など、現代の科学についての個人的思考を中心に記録します。

無意識と意識のモデル

 脳の主体は無意識であり、意識は「拒否権つきモニター」にすぎない、というリベットの実験結果の素直な解釈を基にして、意識のモデルを簡単に組み立ててみます。モデルの概要を図にしてみました。
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 無意識と意識がそれぞれひとつの固まりになっていますが、脳の中で一ヶ所に集中しているという意味ではありません。脳組織としては分散している可能性が大きいです。また右脳・左脳への分割も考えられます。無意識には、自律神経を含む、内臓からの情報と制御を主にする低レベル無意識と、身体の動きや会話など高度な制御をする高レベル無意識に大別されます。無意識の中に記憶場所がありますが、短期記憶については海馬の機能が必要です。
 一方、無意識からモニターすべき情報をそのつど選択し、信号Mによって意識でモニターされます。何を選択するかは主に無意識が行ないますが、意識からのコントロールもある程度はありそうです。拒否権を執行するには、フィードバック信号Fを使って無意識に情報を戻します。図に見るように、身体の情報はすべて無意識につながっていて、無意識が並列処理により行動の判断をし、必要な情報を意識に渡します。したがって、意識が考えているように思われるのは、無意識の思考をなぞっているか、後付けしているに過ぎないということになります。

 簡単なモデルですが、これから見えてくることがいくつかあります。たとえば、頭がぼーっとしている状態は、信号Mが何らかの原因で弱っている状況と考えられます。意識がぼーっとしているときは、無意識に動くことが多く、フィードバックも的確にはできません。
 また、催眠術というのは、同じように信号Mを弱らせか、フィードバックFを遮断する行為だと思われます。そうなると催眠術者の言うことはもともと無意識に直接入っているので、そのとおりに動いてしまい、意識による拒否権がなくなってしまいます。
 たとえば、麻酔で意識のない手術中に話された、医師の会話の内容によって、術後の患者の直り方が違ってくる現象があります。これは、耳から無意識に直接入力された会話の内容が、無意識内の内部記憶に保存されていることの結果と思われます。

 意識のなかには「意識サイクル」のような、仮想のシーケンスがあり、あたかも意志によって身体が動いたかのように錯覚させたり、意識的に思考したように見せかけたり、自己意識やクオリアなどを発生させたりします。それらは無意識の処理をなぞっていて、現実に則していますが、幻覚の一部であるには違いありません。

 このように、意識が脳の中心をなすという考え方は間違いなのかもしれません。脳の主体はあくまで無意識であり、意識は有用ではあるものの付け足しに過ぎないと言えます。かつて地球は宇宙の中心ではなく太陽の周りを回る一惑星になったように、太陽系は銀河系の中心ではなくその端にある辺境の一太陽系になったように、意識は人間および脳の中心ではなく大いなる幻覚を生み出す付属物になるのかもしれません。

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by scienceman | 2011-12-25 08:24 | 脳科学