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サイエンスマンの本格科学メモ

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現代物理、進化論、脳科学など、現代の科学についての個人的思考を中心に記録します。

ビッグバンとインフレーション

 アインシュタインは定常宇宙を信じていて、方程式に宇宙項(宇宙定数)を追加してまで宇宙を定常にしましたが、ハッブルの膨張宇宙の発見により宇宙定数は(一時的に)削除され、膨張の時間を逆行してビッグバン理論という宇宙の始まりについての議論が発生しました。

 原初の宇宙は微小な空間にクォークなどのプラズマが押し込められ、膨張とともに陽子や中性子などの素粒子ができ、しだいにいろいろな原子が作られていきます。ついには重力により星や銀河ができて、140億年後の現在の姿になるわけです。アインシュタイン方程式から導かれる、平坦な宇宙でのフリードマン方程式は(光速c=1、重力定数G=1とします)、
             (da/dt)2 - 8πρa2/3 = 0
です。ここで、a(t) は宇宙の大きさを表わすスケールファクターで、ρは(物質、放射、真空の)エネルギー密度です。時刻 t0 現在のエネルギー密度をρc とし、それぞれのエネルギー密度ρm、ρr、ρvをρcで割って、相対比率をΩm、Ωr、Ωv とすると、物質と放射について次のように解くことができます。物質優勢(Ωm = 1、Ωr = Ωv = 0)では、
             a(t) = a0 (t/t0)2/3
放射優勢(Ωm = 0、Ωr = 1、Ωv = 0)では、
             a(t) = a0 (t/t0)1/2
となります。宇宙は最初放射優勢であり、すぐに物質優勢になると思われます。このような初期の状態・膨張がビッグバンと呼ばれます。宇宙マイクロ波背景放射の存在もビッグバン理論を支持しています。

 ビッグバンは膨張宇宙の帰結ですが、それだけでは説明できない観測結果があります。まずビッグバンで大量に生成されたと思われる磁気単極子(モノポール)がまったく見当たらないということがあります。モノポールはN極あるいはS極だけがある磁気物質です。また宇宙空間は平坦であって歪みはなく、ほぼユークリット幾何が当てはまります。そして宇宙はごく微小なゆらぎ以外は一様であって、等方的でもあります。それらはビッグバンの比較的緩やかな膨張だけでは達成できません。一様になろうにも、情報が宇宙の地平線を越えられずにばらつきが残ってしまいます。

 そこである短い期間、宇宙が急激に膨張するというインフレーション理論が考えられました。平坦なフリードマン方程式で、真空優勢(Ωm = Ωr = 0、Ωv = 1)の場合、
             a(t) = a0 exp{H (t - t0)} 
ここで H = √(8πρv/3)です。このように指数関数的に急激に膨張すれば、地平線より速く大きくなり一様になることも可能で、空間も平坦に近づいていきます。モノポールも一気に密度が薄くなり、我々の周囲から消えていきます。インフレーション理論により、宇宙背景放射のゆらぎの測定結果も、量子ゆらぎによる計算結果とよく一致し、この理論は広く認められています。しかし、真空のエネルギーが発生するメカニズムについては、確立した理論はなく、実証もありません。

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by scienceman | 2012-02-25 16:00 | 宇宙論