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サイエンスマンの本格科学メモ

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現代物理、進化論、脳科学など、現代の科学についての個人的思考を中心に記録します。

意識モデルと夢

 無意識と意識の簡単なモデルを提案したときに、睡眠時の夢については記述しませんでした。これはそのときに考察はしたのですが結論がほとんど出なかったためです。夢については、現代の神経科学や心理学においても、その存在理由は明確になっていません。ここでは、以前の意識モデルをもとに、私たちが夢を見る理由を探っていきます。

 ここでの結論は、夢見とは、おそらく進化で発達した睡眠時の認知プロセスが、必然的に生み出す特殊な変性意識状態であるということです。夢はこの特殊な認知プロセスの結果、自動的・必然的に生成されます。

 睡眠時には五つの段階があって、一晩に何回か繰り返されます。一番浅い眠りは、REM(Rapid Eye Movement)睡眠で、眠ってはいますが脳は活発になり、もっとも多く夢を見ている状態です。まず、意識モデルにおいて、REM睡眠でどのような状態になっているかを考えてみます。

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 睡眠時ですから当然感覚は制限されています。とくに眼はつぶっていて知覚がないか、開いても通常光がない状態です。眠っていると大きな音に気づかないこともあるので、聴覚も制限されているようにも見えますが、少なくとも音の情報は脳に入力されているから、知覚が制限されているだけのように思われます。嗅覚や触覚も同様でしょう。

 このような制限された知覚状態で、REM睡眠では眠りが浅くなり、脳が活発化します。当然、脳は制限された知覚と記憶をもとに、認知プロセスを実行します。眼の情報がないので、記憶を頼りに映像をシミュレーションします。REM(急速眼球運動)の理由は明確ではないですが、その認知した仮想映像を追っていると見なすのは不自然ではないでしょう。この認知プロセスは、知覚が制限されていることを除いて、覚醒時の認知プロセスと何ら変わるところはありません。したがって、覚醒時に無意識の認知プロセスの結果で重要なものが意識に報告される(信号M)ように、REM睡眠時でも認知プロセスの結果で重要と判断したものは意識に出力されるはずです。これが夢となります。夢は睡眠時の認知プロセスに必然的に付随します。つまり、睡眠時の「夢」は、覚醒時の「意識」に対応します。

 なぜREM睡眠が発達したのかの理由は、おそらく進化的に有利だったからでしょう。睡眠は非常に無防備な状態で、ずっと長く深く眠っていては危険なことは想像がつきます。かといって、一晩中REM睡眠では寝不足になってしまいます。そこで眠りの深さを繰り返して、ときどきREM睡眠になり、認知プロセスを起動させて危険などを察知する方法が進化してきたのでしょう。また、危険というわけではなくても、赤ん坊の泣き声にすぐ眼を覚ます母親の例などもあります。

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by scienceman | 2012-06-09 16:04 | 脳科学