渦粒子モデルは可能か?
究極の素粒子の話ですが、ここでは超弦理論からは離れることにします。素粒子を「局在化したエネルギー」と捉える考え方から見ると超弦理論もその路線にありますが、エネルギーが弦の振動であるという必然性はなく、他の可能性もあります。
エネルギーの実体として、また時空の歪みを考えます。宇宙には時空しかなく、その歪みが素粒子の実体となるという見方です。それと関連して、古い仮説ですが、似たものにウィリアム・トムソンの「渦原子」があります(1867)。
渦原子仮説では、時空の代わりにエーテルという流体が前提で、エーテルに発生する渦が多種の原子になるという仮説です。タバコの渦輪のように、いくつかの渦は流体中で安定に存在します。現在ではエーテルも渦原子も否定されましたが、宇宙にはエーテルしかなくて原子は見かけのものである、というところが似ています。
素粒子の話に戻ると、真空が流体と見なせるかどうかが問題になります。時空は流体のようには見えないかもしれませんが、もし時空の細かい歪みが密にあるなら歪みの流体と見なせるかもしれません。歪みの自由行程が短ければその流体は連続体として記述できます。
真空が流体として記述できれば、安定な歪みの渦が発生する可能性があり、それらが素粒子になるかもしれません。渦粒子モデルが素粒子の量子力学的性質をどのくらい説明できるかわかりませんが、イメージはかなり明確になりそうです。
とはいっても、渦粒子が成立するためには上で話したようにいくつかの前提が必要で、やはり渦粒子モデルは可能性のある一つの仮説の域は出ないかもしれません。
by scienceman
| 2014-06-30 21:30
| 現代物理