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サイエンスマンの本格科学メモ

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現代物理、進化論、脳科学など、現代の科学についての個人的思考を中心に記録します。

エピジェネティクスと進化

生物の細胞は生殖細胞などを除いてすべて同じDNAを持っているので、発生の時にいろいろな種類の細胞群ができるためには、DNAにある各遺伝子の発現をコントロールする仕組みが必要で、そのことからもエピゲノムの存在は必然だったと言えるかもしれません。

仕組みの研究がエピジェネティクスで、遺伝子発現のコントロール自体も遺伝することがわかっています。祖母の妊娠時の栄養状態がその孫までの体質に影響したりします。エピゲノムの実体は、DNAのメチル化やDNAが付着しているヒストンのアセチル化などがあり、RNAが絡むものもあります。

そのように環境が遺伝子の発現に影響するとなると、進化論において主張される、獲得形質の遺伝はないことと矛盾するように思われます。確かに古くからの問題設定、つまり形質を遺伝性と獲得されたものに分ける考え方によれば、獲得形質も遺伝しうる、という結果になります。しかし、遺伝子の発現には環境も関わっているという事実(マット•リドレー「やわらかな遺伝子」)から考えれば、遺伝形質と獲得形質は深く関わっていて、きっぱりとは分けられないと思われます。

したがって、遺伝子の意味を単純にDNAと考えるのは、エピジェネティクスの点から誤りであるだけでなく、環境や学習などを通じて遺伝が行われることからも誤りであると考えられます。遺伝子にはDNAだけでなく、エピジェネティクスや環境、学習なども含まれるはずです。だから「獲得形質は遺伝しない」という主張自体に意味がなくなっているのかもしれません。


by scienceman | 2014-10-01 17:53 | 進化論

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