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サイエンスマンの本格科学メモ

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現代物理、進化論、脳科学など、現代の科学についての個人的思考を中心に記録します。

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 ミラーニューロンは最近発見された脳細胞群で、発火して身体の運動を制御するだけでなく、他者の同じ運動を観察したときにも発火します。単に運動それ自体だけでなく、他者の意図も判断して発火します。また運動の視覚情報だけでなく、音にも反応します。最初サルにおいて発見されましたが、他の類人猿や人間にも存在することが確認されています。

 ミラーニューロンは自己の脳という鏡に、あたかも他人が存在するかのようにシミュレートして映し、模倣による発達や学習、共感による社会的関係の構築に寄与していると言われています。さらに言語の発達にも関与しているという仮説が出ていて、マーケティングや政治への応用なども試みられています。

 このようにミラーニューロンは人間らしい行為のかなりの部分に関係していると思われますが、基本的に注目すべき点は、それが無意識での機能であることです。人は無意識のうちに自動的にミラーニューロンを発火させ、他者の感情を読み取ったりします。前回議論した無意識・意識モデルでの「高レベル無意識」における機能です。したがって、ミラーニューロンが人間の社会活動で重要な役割を果たしているとすれば、脳では無意識が主体であるという主張が裏付けられることになります。意識は後付けの言い訳にすぎないのかもしれません。

 ミラーニューロンに関して、書籍では「共感」などのポジティブな面が強調されていますが、ネガティブな面もあることを指摘しておきます。正のミラーリングに対して、悪いことが伝播するという「負のミラーリング」です。社会から暴力や戦争が無くならない事実からして、この負のミラーリングが存在するのは確かなように思えます。現代の脳科学から負のミラーリングに対してどのような対処策が引き出せるかが鍵かもしれません。

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

マルコ イアコボーニ / 早川書房


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by scienceman | 2012-01-16 16:07 | 脳科学