現代の心理学がカバーする分野の数は膨大であり、それぞれ分厚い解説書が必要なくらいで一人ですべて熟知することはほとんど不可能なほどです。その中で現在活発に研究されていて、しかも基本的な分野は、認知心理学、発達心理学、社会心理学、それに臨床心理学です。
昔はヴントの構成心理学(心を構成要素に分けて研究していく方法)に始まり、ゲシュタルト心理学(全体のまとまりを重視する見方)、行動主義(行動とその変化のみに注目)、精神分析(無意識を強調する考え方)など、いくつかの学派や主義のどれかに基づいて研究することが主だったのですが、それらはどちらが正しいというものではなく、それぞれ一理はあるもののすべてに適用できるもではありません。したがって、それらの流れを汲みつつ心理学の各分野で適切な方法、あるいは組み合わせ方法を選んで理論を構築し実践に応用していく、という方向になっているようです。
一般的に心理学では、自然科学とは異なり、すべての人間と環境で適用できる普遍的な理論や法則はありません。いろいろなアプローチがあり、どれが正しくてどれが間違っているとは一概に決められず、決着がつかないことも多いようです。それぞれに利点があり、欠点があります。行動主義では、行動に現われない記憶のような心理を扱うことは難しいですし、構成心理学では説明できないゲシュタルト的な心理現象も多くあります。臨床心理の実際では、個々のケースで応用として最適なアプローチを選ぶことが重要です。
また、日本では欧米の心理学をそのまま取り込んで、いわば直訳的に日本語に翻訳することが多かったため、専門用語にわかりにくい言葉があります。たとえば「作業記憶」は、working memory の訳ですが、作業の記憶ではなく、コンピュータ用語でいうところの「キャッシュメモリ」のことです。working はすぐに使えるという意味で、訳語ではそのイメージは感じられなくなります。最近では無理に翻訳せずカタカナで表わすことが多いようですが、やはり的確な翻訳を期待します。
認知心理学において、「思考」を考察するとき、考えに偏り(バイアス)が生じることが議論されます。もっともバイアスが起こりやすいものに「素朴理論」があります。これは自然に身につく理論のことで、典型的な例には「天動説」があります。毎日空を見上げていれば、太陽が地球の周りを回っていると思うのは自然な理論であって、実際人類は何百年もこの素朴理論を信じてきました。残念ながら素朴理論を打ち崩すには何年もかかります。近代の自然科学でもその例はたくさんありますし、現代でもその芽は多く隠れているに違いありません。また、「確証バイアス」というものもあり、人間は確証を少しでも得られると容易にその説を信じてしまうということもあります。天動説に見るように科学の分野でもそれは変わりません。このように、認知心理学や集団心理学が交差する領域で、「科学心理学」という分野が考えられるかもしれません。
心理学の理論は、 当然のこととして文化・地域・年齢・性別の影響を受けますが、まだ十分に考慮されている状況ではないようです。理論自体もすべての文化・地域で実験・実証されているものはないと思われます。とくに日本では、臨床心理の現場でも、欧米の臨床心理理論の取り込みに追われているだけで、日本文化の特質を生かした心理治療までは至っていないようです。欧米と日本の違いは、端的には個人主義と関係を重視する「間人主義」の違いです。文化の違いを正しく意識して臨床心理を考えていく姿勢が必要と思われます。
個別の心理学分野については、別途考察したいと思います。
昔はヴントの構成心理学(心を構成要素に分けて研究していく方法)に始まり、ゲシュタルト心理学(全体のまとまりを重視する見方)、行動主義(行動とその変化のみに注目)、精神分析(無意識を強調する考え方)など、いくつかの学派や主義のどれかに基づいて研究することが主だったのですが、それらはどちらが正しいというものではなく、それぞれ一理はあるもののすべてに適用できるもではありません。したがって、それらの流れを汲みつつ心理学の各分野で適切な方法、あるいは組み合わせ方法を選んで理論を構築し実践に応用していく、という方向になっているようです。
一般的に心理学では、自然科学とは異なり、すべての人間と環境で適用できる普遍的な理論や法則はありません。いろいろなアプローチがあり、どれが正しくてどれが間違っているとは一概に決められず、決着がつかないことも多いようです。それぞれに利点があり、欠点があります。行動主義では、行動に現われない記憶のような心理を扱うことは難しいですし、構成心理学では説明できないゲシュタルト的な心理現象も多くあります。臨床心理の実際では、個々のケースで応用として最適なアプローチを選ぶことが重要です。
また、日本では欧米の心理学をそのまま取り込んで、いわば直訳的に日本語に翻訳することが多かったため、専門用語にわかりにくい言葉があります。たとえば「作業記憶」は、working memory の訳ですが、作業の記憶ではなく、コンピュータ用語でいうところの「キャッシュメモリ」のことです。working はすぐに使えるという意味で、訳語ではそのイメージは感じられなくなります。最近では無理に翻訳せずカタカナで表わすことが多いようですが、やはり的確な翻訳を期待します。
認知心理学において、「思考」を考察するとき、考えに偏り(バイアス)が生じることが議論されます。もっともバイアスが起こりやすいものに「素朴理論」があります。これは自然に身につく理論のことで、典型的な例には「天動説」があります。毎日空を見上げていれば、太陽が地球の周りを回っていると思うのは自然な理論であって、実際人類は何百年もこの素朴理論を信じてきました。残念ながら素朴理論を打ち崩すには何年もかかります。近代の自然科学でもその例はたくさんありますし、現代でもその芽は多く隠れているに違いありません。また、「確証バイアス」というものもあり、人間は確証を少しでも得られると容易にその説を信じてしまうということもあります。天動説に見るように科学の分野でもそれは変わりません。このように、認知心理学や集団心理学が交差する領域で、「科学心理学」という分野が考えられるかもしれません。
心理学の理論は、 当然のこととして文化・地域・年齢・性別の影響を受けますが、まだ十分に考慮されている状況ではないようです。理論自体もすべての文化・地域で実験・実証されているものはないと思われます。とくに日本では、臨床心理の現場でも、欧米の臨床心理理論の取り込みに追われているだけで、日本文化の特質を生かした心理治療までは至っていないようです。欧米と日本の違いは、端的には個人主義と関係を重視する「間人主義」の違いです。文化の違いを正しく意識して臨床心理を考えていく姿勢が必要と思われます。
個別の心理学分野については、別途考察したいと思います。
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by scienceman
| 2012-05-16 11:34
| 心理学